心理的財布

心理的財布はマーケティング用語のひとつで、人は購入する商品によって心理的に複数の財布を持っている理論のことです。

実際に自分で商品を購入する場合、価値があると考えている物には10万円を使っても惜しくないと考えますが、そう思っていない商品には1,000円でも惜しいと感じてしまうのが心理的財布です。

心理的財布の概念

心理的財布という概念を提唱したのは日本の消費者心理学研究のパイオニアと言われている小嶋外弘教授です。

小嶋外弘の実験などの結果から消費者には以下の4つの心理的財布のパターンがあることがわかりました。

個人内商品内

「個人内商品内」には、購入する人と商品が同じであっても異なる心理が振り分けられます。

たとえば同じレストランで同じ料金の食事をおごる場合、相手が会社の後輩と恋人ではまったく違う心理が働きます。

後輩の場合、次はもっと安い場所でおごろうと後悔し、恋人の場合はこれでよかったと満足することが考えられます。

個人内商品間

「個人内商品間」は購入者が同じでも商品によって心理的財布が違うことを意味します。

たとえば同じ価格でも趣味のために購入するときは抵抗がなくても、生活費であれば躊躇するといったケースです。(3,000円のプラモデルはすくに買うが、食費に1回3,000円はためらうなど)

個人間商品内

「個人間商品内」は同じ商品やサービスでも、人によって財布の紐の緩みが違うケースです。

あるアイドルが好きな人がそれほど好きではない友人をライブに誘ったときなどが良い例です。

入場料は同じ5,000円でも本人は安く感じるかもしれませんが、友人には高額に感じるでしょう。

個人間商品間

「個人間商品間」は商品も購入者にも違いが現れるケースです。

同じパソコンを購入する場合でも、デザインを優先する人もいれば、性能を重視する人もいます。

さらに価格は気にせずに購入する人もなるべく安く購入しようとする人もいます。

同じ種類の商品でも様々なケースが存在するのが、「個人間商品間」です。

心理的財布のマーケティング応用

心理的財布では購入する人が考える商品価値によって、購入するかどうかが決定するので、消費者一律に応用するのはそれほど簡単なことではありません。

人それぞれで価値観や経済状態が違うからです。

しかし、日用品のように誰もが必要な商品は低価格商品が売れる傾向があります。反対に一般的ではないコアなマニア向け商品はむしろ価格が安ければ偽物と判断されて売れなくなるでしょう。

心理的財布を緩めるためには、むしろ高級品やマニア向け商品は価格が高い方が売りやすくなると考えましょう。

また、あらゆる心理的財布に対応するために、商品のラインナップを豊富にし、価格も幅広く設定しておくのもひとつの方法です。