時間節約バイアス
時間節約バイアスとは、高速で移動しているときはさらにスピードを上げて節約できる時間を過大評価し、反対に低速で移動しているときはスピードを上げて節約できる時間を過小評価することです。
高速で移動中にさらにスピードアップすれば、かなり時間を節約できると感覚的に思ってしまいます。
しかし、現実的にはそれほど時間の節約にはなりません。
反対に最初からゆっくり移動していたときには、少しくらいスピードを上げても時間の節約にはならないと思ってしまいます。
ところが、思ったよりも時間が節約できてしまいます。
時間節約バイアスの具体例
実際に計算をしてみると時間節約バイアスを実感することができます。
50㎞先の目標地点まで到達する時間を、高速時と低速時で考えてみます。
◆30㎞/hでスタートして10㎞経過後に速さを10㎞/hアップ
・(10㎞÷30㎞/h)+(40㎞÷40㎞/h)=1.3時間
・50㎞÷30=1.67時間・・・すべて30㎞/hで移動した場合
・節約時間1.67時間-1.3時間=22分
◆120㎞/hでスタートして10㎞経過後に速さを10㎞/hアップ
・(10㎞÷120)+(40㎞÷130㎞/h)=23.4分
・50㎞÷120㎞/h=25分・・・すべて120㎞/hで移動した場合
・節約時間25分-23.4分=1分36秒
上記は極端な例ですが高速移動していれば、それから多少早く移動してもそれほど影響はありません。
反対に低速移動時はスピードアップすることで移動時間は大きく節約できることがわかります。
感覚的には高速移動していると高速に感覚が引っ張られてしまい、これよりもスピードを上げるとものすごく速くなる感じがします。
しかし、実際には上乗せしたスピードの分しか速くならないので、もともとのスピードに比べると大きな影響はありません。
そのため、感覚的な節約時間と実際の節約時間に大きな差が生まれて、時間節約バイアスが働くのです。
時間節約バイアスの応用
時間節約バイアスが最も応用できるのは自動車を運転しているときです。
時間節約バイアスを知っていれば、高速移動時にそれよりもスピードを上げても到達時間はそれほど変わらないことがわかります。
そうすれば無理をしてさらにスピードを上げることもなくなり、事故を未然に防ぐことにもなります。
また、時間節約バイアスは時間だけでなく生産性に対しても働くことが、2011年にストックホルム大学のオラ・スヴェンソンが研究してわかっています。
つまり従業員が30名いる場合に10名増員した場合は効果が高いですが、100名以上いる場合に10名増員してもそれほど効果は期待できません。
これを踏まえて人員補充によって生産性を高めたいときには、感覚だけでなくきちんと計算してから増員する必要があるとわかります。