エンハンシング効果

エンハンシング効果は外発的動機づけによって、内発的動機づけが高まることで、モチベーションが上がる効果のことです。

エンハンシング(enhancing)には「高める」という意味があります。

内発的動機づけは見返りがなくても、もっとやりたいと感じることで行動を続ける動機のことです。

やりがいを感じて仕事をしたり、楽しいから学校に行ったりということが内発的動機づけの代表的な例です。

一方で外発的動機づけは、ほめられたい、賞金が欲しいといった報酬が目的だったり、反対に怒られたくない、罰を受けたくないという嫌なことを避けるためだったりという理由が動機づけとなります。

エンハンシング効果はきっかけが外発的動機づけで行動しても、続けていく内に内発的動機づけが高まっていく効果のことです。

エンハンシング効果の実験

エンハンシング効果が確認できる実験例を見てみましょう。

次の3つのグループに分けられた子供達に算数の試験を複数行います。

A. 試験のたびにほめられ続けるグループ
B. 試験のたびに叱られ続けるグループ
C. 何もいわれないグループ

結果としてAグループは徐々に子供達のやる気が出始めて最も成績が良くなりましたが、Bグループの場合、最初は叱られないように努力しましたが次第にやる気をなくしています。

エンハンシング効果の教育への応用

子供はほめると伸びるといわれていますが、エンハンシング効果を子供の教育に取り入れる場合は、そのほめ方を間違えてしまうと逆効果になるので気をつけましょう。

下記の実験でほめ方によって結果が違うことがよくわかります。

知能テストを行った子供達全員に「100点中80点」であることを告げてから、それぞれコメントを変えた以下の3つのグループに分けます。

A. 「本当に頭がいいんだね」
B. 「努力のかいがあったね」
C. 何もコメントしない

コメントをした後で全員に以下の課題からひとつを選んでもらいました。

1. 難しいけれどもやりがいがある課題
2. 簡単で学びが少ない課題

その結果グループごとに課題の選択率が以下のように大きく違いました。

A. 簡単な問題65%、難しい問題35%
B. 簡単な問題10%、難しい問題90%
C. 簡単な問題45%、難しい問題55%

同じほめたグループでも「頭がいい」とほめたグループは、頭がいいと思われたい気持ちで間違えない簡単な問題を選んだり、頭がいいから頑張らなくてもできると考えたりするようになります。

むしろ何もいわない方が良い結果になっているのは驚きです。

これに対して努力をほめられると、それを維持しようとするのでさらに成績が良くなる可能性があります。

つまりエンハンシング効果を教育的に利用しようとする場合は、努力や過程をほめることが重要だとわかります。