生存者バイアス

生存者バイアス(Survivorship Bias)は、選択バイアスのひとつで何らかの選択過程を通過した人や物、事のみを基準として判断を行い、通過に失敗した人や物、事が見えなくなることです。

具体的には飛行機事故などで生存者にインタビューをして、「事故はそれほど危険ではなかった」と結論づけることがあります。

しかし、それは生存者にだけしか聞き取りができず、死亡者への聞き取りができないので生存者バイアスがかかってしまうからです。

つまり生存者バイアスは成功事例だけで判断し、失敗した例を考慮しない場合に判断を誤ってしまうことを言います。

生存者バイアスの例

大戦中の戦闘機の強化に関して生存者バイアスの例があります。

無事帰還した戦闘機の被弾損傷した部分に印を付けた図を作り戦闘機の強化を命令しました。

通常であれば損傷部分を強化すると考える人が多いはずです。

しかし、当時実際にこの図を見た統計学者は、損傷していない部分を強化すべきだと言っています。

実際に撃墜されてしまった戦闘機は調査できませんが、帰還した戦闘機は被弾しても戻ってこれたと言うことは、被弾しなかった部分が原因で撃破された可能性が高いと言うことです。

損傷した部分を強化すればいいと考えた場合は、生存者バイアスがかかっていることになります。

これ以外にも以下のような生存者バイアスの例があります。

  • スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグは大学を中退して億万長者になったのだから、自分も中退して億万長者になれる・・・数多くの大学中退者を調査する必要がある
  • 成功を収めた企業のビジネスモデルや、成功者の伝記を読んでまねれば成功できる・・・失敗したビジネスモデルや失敗者を考慮していない

生存者バイアスの活用

生存者バイアスは特にビジネスにおいて企業が陥りやすいので注意する必要があります。

たとえば、満足度の低い顧客に重点的に対応することによって、顧客を維持することができると考える企業は多いと思います。

しかし、これもやはり生存者バイアスにかかっていえます。

満足度が低い顧客は不満足なので既に顧客として機能していない可能性が高くなります。

そのため満足度の高い顧客をないがしろにすることになり、むしろ顧客を減らす可能性が高くなります。

また、顧客からの要望があるからといって製品に機能を増やすことも、生存者バイアスに陥りやすくなります。

機能を増やすことでのマイナスの要素も考慮した上で、機能を付加することを検討なければいけないからです。

企業としての決断をする場合は、常に生存者バイアスを考慮してちがう視点からも検討することを忘れないようにする必要があります。