認知的不協和

認知的不協和(Cognitive Dissonance)は、アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーによって提唱された、人が自分の認知とは別の矛盾する認知を抱えた状態やそのときに覚える不快感を表す社会心理学用語です。

イソップ物語のすっぱいブドウの話は認知的不協和を表す逸話として知られています。

認知的不協和とすっぱいブドウ

イソップの「すっぱいブドウ」は、おいしそうなブドウを見つけた狐が、どうしてもブドウをとることができなかったので、すっぱいブドウに違いないと言って立ち去る話です。

おいしいブドウを食べたいのにそのブドウを手に入れないことは認知的不協和を生み出します。

認知的不協和を感じるとその不協和尾を軽減するために何らかの圧力を行うことになります。

つまり、ブドウをすっぱい物だと思い込むことによって、不協和を軽減しようとしたのがイソップのすっぱいブドウなのです。

喫煙と認知的不協和

認知的不協和を軽減するための圧力は、不協和が強いほど強くなります。

これは喫煙の認知的不協和を考えるとわかりやすくなります。

喫煙者は喫煙が好きだが健康に悪いという認知的不協和を抱えている存在です。

この認知的不協和を解消するには禁煙することが合理的です。

しかし禁煙は不快感を伴いなかなかうまくいきません。

そのため、やめるにやめられないという強い認知的不協和を抱えることになります。

そこで、喫煙者はタバコが好きだという認知はそのままにして、タバコが健康に悪いという認知を別の認知で打ち消そうとします。

たとえば、タバコを吸っても長生きする人がいる、交通事故で死ぬ人の方が多いといった認知をして認知的不協和を解消しようとします。

つまり認知的不協和が強い場合、それを解消するために複数の新しい認知を必要とするのです。

フェスティンガーの実験

フェスティンガーは認知的不協和の実験として以下の実験を行いました。

単調でつまらない作業をさせた被験者に対して、同じ作業をする次の被験者に作業の楽しさを伝えるという実験です。

単調でつまらない作業なのに、楽しさを伝えなければいけないことで認知的不協和が生じます。

フェスティンガーは被験者に対して報酬に差を付けて実験しました。

その結果、報酬が少ない被験者の方が楽しさを伝える度合いが大きくなりました。

つまり、報酬が少ない被験者は、本当はこの作業は楽しかったと思うことで、認知的不協和を軽減しようとしたことになります。