皮肉過程理論

皮肉過程理論(Ironic Process Theory)は、何かを忘れようとすればするほど、そのことについて強く意識してしまうため忘れることができない現象のことを言います。

たとえば、たばこをやめようと意識するほどタバコのことを考えてしまい、やめられなくなるのもこの理論の例のひとつです。

1987年にダニエル・ウェグナーが提唱しましたが、通称「シロクマ実験」と呼ばれている実験によってこの理論を構築したと言われています。

皮肉過程理論の実験「シロクマ実験」

ウェグナーは以下の要領で実験を行いました。

被験者を次の3つのグループに分けてシロクマの1日を記録したビデオを視聴させました。

A. シロクマのことを覚えておくよう伝えたグループ
B. シロクマのことを考えても考えなくてもいいと伝えたグループ
C. シロクマのことは考えてはいけないと伝えたグループ

そして1年経過してから各グループのメンバーにシロクマに関する記憶を確認したところ、最もよく覚えていたグループはCのグループでした。

皮肉過程理論屁の対処法(代替思考)

シロクマ実験によって考えないようにするほど対象に対する意識が強くなって、かえって忘れられなくなると言うことが証明されました。

しかし、この実験には続きがあります。

実験ではさらに被験者に対して以下の指示をしてから同じビデオを視聴させています。

D. シロクマのことは考えない。もし考えてしまいそうになったら、赤いフォルクスワーゲンを思い出すようにする。

その結果、DのグループはCのグループほどシロクマに関する記憶は残らなくなりました。

この場合の「赤いフォルクスワーゲン」は「代替思考」と呼ばれていて、代わりに思い出すことで対象の記憶を思い出さないようにすることが可能になります。

つまり、忘れたいことがあったらそれを思い出しそうになったときに、あらかじめ決めておいたことを考えるようにすることで忘れる可能性が高くなります。

反対に忘れたくないことがあれば、いつもそのことについて考えていると記憶が定着しやすいと言うこともできます。