過去美化バイアス(バラ色の回顧)

過去美化バイアス(Rosy Retrospection)は直訳してバラ色の回顧と呼ばれることもありますが、過去の記憶を当時よりも美化して思い出してしまう認知バイアスのひとつです。

詳しい説明を聞かなくても、ほとんどの人が経験したり、話を聞いたりしたことがあるはずです。

過去バイアスが生じる原因

過去を美化する過去美化バイアスが生じるのには以下の原因があるといわれています。

悪いことは早く忘れる

人間の記憶はよいことよりも悪いことの方を早く忘れてしまう傾向があるので、必然的に過去のよかったことの記憶が多くなります。

それに比べて現在進行している出来事は、悪いこともよいことも同時に起こっているので、比較すると過去がよかったように感じてしまいます。

若さに憧れる

人間は自分の若さに憧れる傾向があるので、実際には若い頃の環境がすべてよかったわけでなくても、若さとそのときの環境を混同して、若い頃はよかったと考えてしまいます。

過去の選択を否定されたくない

人は自分の過去を否定されたくないので、過去の選択で生じた結果もよいことだったと捉えて美化してしまいます。

過去美化バイアスの問題点

単に自分だけで過去を思い出してよかったと思っているのであれば、過去美化バイアスが起こっても特に問題はありません。

実生活で過去美化バイアスが問題となるのはどのようなケースでしょうか。

たとえば企業の創設者が会社を創設した当時の雰囲気を懐かしみ、家族のような状況だったと美化して、初心に返ろうと提唱したとしたらどうでしょうか。

確かに創設当初は人数も少なかったので、お互い助け合って家族的な雰囲気はあったかもしれませんが、創設当時にはそのときの問題が山積みだったはずです。

初心に戻ることは悪いことではありませんが、漠然として具体的ではありません。

経営者としては初心に戻ると提唱するのであれば、創設当時のどの部分を再現したいのか、なぜ今必要なのかを具体的に示す必要があるでしょう。

経営者でなくても漠然と昔はよかったと主張する上司には部下もついて行けないでしょう。

過去美化バイアスを防ぐ方法

過去美化バイアスを避ける明確の方法を探すのは難しいですが、どんなバイアスでもそれを認識することである程度防止することができます。

過去美化バイアスの場合は過去が美化されるしくみや原因を理解した上で、将来美化される現在をよりよいものにしようと前向きな力に変えていくといいでしょう。

現在でさえよいと感じるのであれば、未来に現在を思い出したときにどんなに素晴らしくなるのかを想像してみましょう。