現状維持の法則

現状維持の法則(The rule of “Sticking With The Status Quo/Default”)は、人は選択肢が多くなるといつもと同じ選択肢を選んでしまう心理現象のことです。

これはプリンストン大学の行動経済学者エルダー・シャフィール博士が提唱しています。

同じような法則に「決定回避の法則」があり、これは選択肢が多いと選択を放棄するという法則です。

決定回避をする場合はその選択の対象に選択しないというケースが含まれています。

しかし、日用品の購入など必ず選択が必要な場合は、現状維持の法則が働くと考えられます。

現状維持の法則の実験

この法則の実験は日本の証券会社のTVCMで、シャフィール博士自身が出演して行っています。

違う手帳も欲しいと思っているいつも黒い手帳を購入している男性がいます。

その男性に10種類の手帳の選択肢を与えたところ、やはりいつもの黒い手帳を選んだという実験でした。

現状維持の法則が成り立つ理由

人間の脳は物事を選択するときはすべてを比較して判断します。

そのため選択肢が多いほどエネルギーを消費してしまうので、選択肢が多いときはエネルギーを節約しようとしまいます。

その結果、必ずしも選択が必要ない場合は「決定回避の法則」により、選択を放棄します。

また、日用品のように購入が必須の場合は、比較せずにいつもの商品を選んでしまうのが「現状維持の法則」です。

また、新しい商品を購入した場合には、思ったものと違ったり、性能が悪かったりといったリスクが必ず伴います。

この失敗による損失を避けるという理由も現状維持の法則の裏にあります。

現状維持の法則の例

日常生活ではよくサンプル品を配るという商法を見かけますが、この手法にも現状維持の法則が関わっています。

無料で試供品を配るのはコストがかかりますが、サンプルを使用した人には現状維持の法則で別の商品を選択するのが面倒という心理が働きます。

そのため続けて同じ商品を購入する可能性が高くなります。

雑誌や日用品などでは定期購読や定期購入という販売方法があります。

定期購入などを続けていると現状維持の法則で他の選択肢を選ぶのが面倒になります。

その結果長期間同じ商品を購入するのです。

反対にマーケティングに応用する場合は、現状維持の法則を回避させたほうがいい場合もあります。

いつも購入している商品から自社製品に切り替えてもらう場合などは、今よりも良い選択肢があることや現状維持には未来がないといったことを強調したキャッチコピーを使うという方法もあります。